都市の隠れ家 - 老婦人のための終の棲家, 2017

The retreat in the city - , 2017
老婦人と、その飼い犬のための住宅の計画である。施主の要望は「長く住んだ邸宅から住み替える、静かなひとり住まいのための住宅」だった。敷地があるのは、駅からほど近い丘陵地の上の住宅地。かつての邸宅の土地を分筆してできた旗竿地で、かつ高さ5メートルの擁壁の角にある。住宅地の奥、他に逃げ場のないような場所だ。こうした敷地の閉塞感を軽やかに躱すような建築こそ、施主にはふさわしいと思えた。まずは擁壁をはみ出すように配置したボリュームで住宅街のリズムを崩し、周辺環境と住宅の間に多様な距離感を作りだす。それらは東側の生活動線を介して住宅内部に引き込まれ、施主の日常的な風景の一部となるはずだ。また二階部分に備えたのは、古い邸宅の思い出を整理するための倉庫である。この計画はいわば、施主が静かな暮らしを構える「離れ家」を、都市空間のただ中に作る試みなのだ。
  • Location

    : 神奈川県川崎市
  • Year

    : 2017
  • Area

    : 87.57㎡